――私が守っている仕事の流儀と、これからの会社のかたち
① 判断を先送りしない。それが経営の土台
私が仕事を進めるうえで最も大切にしているのは、「判断を先送りしないこと」だ。経営に迷いはつきものだが、迷いを放置することが一番のリスクになる。
毎朝、出社したら資金繰りと進行中の案件を確認する。細かい分析をするわけではない。「今どうなっているか」を把握することが目的だ。数字に小さな違和感があれば、そのままにしない。完全な正解を待つのではなく、その時点で最善だと思える方向へ舵を切る。
判断を遅らせれば遅らせるほど、選択肢は減る。だから怖くても決める。経営とは、その連続だと考えている。
② 現場と数字、その両方を見る
机上の数字だけでは会社の実態は見えない。だからこそ、できるだけ現場に足を運ぶ。社員や協力業者と直接話し、現場の空気を感じる。職人の表情には、数字には表れない情報がある。
一方で、感覚だけに頼ることもしない。原価、工程、利益率。数字は必ず確認する。感情とデータ、その両方を見て判断することで、偏りのない経営ができる。
効率よりも信頼を優先する。約束や期限は必ず守る。それを積み重ねることが、会社の信用になる。派手な戦略よりも、日々の積み重ねのほうが強い。
③ 少人数だからこそ、無理をさせない
社員は6名。小さな組織だからこそ、一人ひとりの影響は大きい。誰かが無理をすれば、すぐに全体へ響く。
だから無理はさせない。役割と責任を曖昧にしない。できないことは無理に任せない。気合いや根性で乗り切る経営は長続きしない。
立場に関係なく意見を言える雰囲気も大切にしている。問題は小さいうちに共有する。遠慮や我慢が積み重なれば、必ず歪みが出る。本音で話せる関係があるからこそ、組織は強くなる。
組織の強さは人数ではない。信頼の濃さだと考えている。
④ 技術よりも人柄を見る
採用や育成で重視するのは、「一緒に長く働けるかどうか」だ。
技術は後から伸ばせる。しかし姿勢や人柄は簡単には変わらない。約束を守るか。仲間を尊重できるか。誠実に仕事に向き合えるか。そこを見る。
かつては即戦力や売上への貢献を優先したこともある。しかし、その判断はうまくいかなかった。目先の成果よりも、長く続く関係を選ぶ。そのほうが結果的に会社は安定する。
会社は人でできている。だからこそ、人を大切にする経営を貫く。
⑤ 営業をしない営業という選択
私が「うまくいった」と感じているのは、営業らしい営業をしなかったことだ。
広告や無理な受注拡大に力を使うよりも、既存のお客様や地元業者との関係を守ることに経営資源を集中させた。引き渡し後の小さな相談や修繕にも必ず対応する。
その結果、「困ったらまず相談する会社」と言ってもらえるようになった。紹介が増え、安定した受注につながっている。
自分たちが無理なく回せる仕事量と品質を守る。強みが活きる範囲に絞る。背伸びをしない。その選択が経営を安定させた。
拡大よりも信頼。スピードよりも継続。それが私たちのやり方だ。
⑥ 次の世代につなぐ会社をつくる
起業当初の自分に言うなら、「焦るな」と伝える。
会社は急に大きくしなくてもいい。続けていれば強くなる。目の前の売上や他社と比べて不安になる気持ちは分かる。しかし、無理をすれば人も会社も壊れる。
分からないことは頼ればいい。断る勇気も持てばいい。誠実に積み重ねた信頼は、必ず返ってくる。
これから目指すのは、「無理なく続き、次の世代につなげられる会社」だ。売上規模を追うよりも、利益と働きやすさのバランスを整える。私がいなくても現場と判断が回る体制をつくる。
若手が自然に育ち、技術と考え方が受け継がれていく会社。
地域に根ざし、「この会社があってよかった」と言われ続ける存在であること。それが目標だ。
経営とは、一瞬の成功ではない。続ける覚悟の積み重ねだ。




