――富山中部自動車学校が貫く“信頼を積み上げる組織づくり”
① 社長自身の仕事の進め方・習慣
――「現場に立つこと」を何より大切に
私が経営者として日々大切にしていることは、できる限り現場に立つことです。
毎朝、必ず校内を一周します。
教習コースの様子、受付の雰囲気、待合室の空気感。
数字では見えない“温度”を感じ取ることを習慣にしています。
教習生の表情が硬くないか。
指導員が無理をしていないか。
小さな違和感は、必ずどこかに原因があります。
その違和感を見逃さないことが、経営者の役割だと考えています。
また、毎週必ず時間を取っているのが、指導員やスタッフとの対話です。
形式ばった会議だけでなく、雑談も含めて話を聞く。
現場の声は、机上のデータよりも早く変化を教えてくれます。
判断基準として意識しているのは、「短期」と「長期」の両方を見ることです。
目の前の利益だけを追うと、どこかで歪みが生まれます。
一方で、理想だけを語っても、現実は動きません。
今やるべきか。
もう少し待つべきか。
迷ったときは、「5年後にも誇れる判断かどうか」を自分に問いかけます。
もう一つ、大切にしている習慣があります。
それは、経営者として弱さを隠さないことです。
すべてを抱え込まず、迷っていることは素直に共有する。
そうすることで、組織は強くなると実感しています。
経営者は孤独だと言われます。
確かに決断は一人で下します。
しかし、日々の経営は“チーム”でつくるものです。
だからこそ、現場に立ち、人と話し、空気を感じる。
派手さはありませんが、それが私の仕事の進め方です。
② 人・組織づくりで意識していること
――「技術よりも、人として信頼できるか」
自動車学校にとって、最も大切な資産は“人”です。
どれだけ設備が整っていても、
どれだけ効率的な仕組みがあっても、
最終的に教習生と向き合うのは指導員一人ひとりです。
だからこそ、採用や育成で最も重視しているのは「人として信頼できるか」という点です。
運転技術は後から身につけることができます。
しかし、相手の不安に寄り添う姿勢や誠実さは簡単には身につきません。
面接では、スキル以上に「なぜこの仕事を選んだのか」を深く聞くようにしています。
その人がどんな価値観を持っているのかを知ることが、何より大切だと考えているからです。
過去には、技術力を重視しすぎた採用でうまくいかなかった経験もあります。
教えるのは上手でも、教習生との信頼関係が築けない。
その結果、満足度が伸びないケースがありました。
その失敗を通じて、「技術と人間力のバランス」が重要だと学びました。
育成においても、単に教習内容を伝えるだけでなく、「なぜそうするのか」を共有しています。
例えば、安全確認一つとっても、それは試験に合格するためではなく、“命を守る行為”であるということ。
その本質を理解してもらうことが、組織としての強さにつながると考えています。
また、意識しているのは“風通し”です。
役職や年齢に関係なく意見を言える環境をつくること。
若手の声が経営判断に反映されることも少なくありません。
組織は固定化した瞬間に弱くなります。
常に学び、変わり続ける集団でありたい。
人を育てるというより、人とともに成長する。
それが、私が大切にしている組織づくりの姿勢です。
③「このやり方はうまくいった」と言える独自の工夫
――“通いやすさ”を仕組みでつくる
これまでの取り組みの中で、「やってよかった」と胸を張って言えるのは、通いやすさを徹底的に仕組み化したことです。
自動車学校選びの基準は、料金や立地だけではありません。
実際には、「通い続けられるかどうか」が大きな要素になります。
そこで私たちは、“途中で挫折しない環境づくり”に力を入れてきました。
その一つが、きめ細かな送迎体制です。
単に送迎バスを出すのではなく、自宅前までの対応や細かな時間調整を行うことで、通学の負担を最小限にしました。
教習そのものが不安なのに、通うことまで大変では続きません。
もう一つは、振り返りの仕組みです。
ドライブレコーダーの映像を活用し、「できなかった」ではなく「次はどうするか」を一緒に考える時間を設けました。
叱る指導ではなく、納得する指導へ。
この考え方は、紹介につながる大きな要因になったと感じています。
さらに、情報発信の方法も見直しました。
設備の充実や合格率といった数字だけでなく、指導員の想いや卒業生の声を丁寧に伝えるようにしたのです。
その結果、「雰囲気が良さそうだから選びました」という声が増えました。
他校との大きな違いは、“技術の前に安心を届ける”という姿勢を一貫している点だと思います。
派手なキャンペーンや価格競争ではなく、地道に信頼を積み重ねる。
即効性はありませんが、確実に紹介や口コミという形で成果が表れています。
自動車学校は一度きりの関係で終わる場所ではありません。
「家族にも勧めたい」と思ってもらえる存在であること。
その積み重ねこそが、私たちの最大のノウハウだと感じています。
④もし過去の自分に声をかけるなら
――「焦らなくていい、信頼は必ず積み上がる」
もし起業当初の自分に声をかけられるなら、こう伝えたいと思います。
「焦らなくていい。信頼は、必ず積み上がる」
経営を始めたばかりの頃は、とにかく結果を出さなければならないという思いが強くありました。
売上を伸ばさなければ。
数字で証明しなければ。
周囲に認めてもらわなければ。
その焦りが、時に判断を急がせ、遠回りを生んでいたように思います。
本当に大切なのは、目の前の一人と丁寧に向き合うことでした。
教習生一人ひとりの不安を取り除くこと。
職員一人ひとりの声に耳を傾けること。
その積み重ねが、やがて数字となって表れます。
派手な成功よりも、地道な信頼。
短期的な成果よりも、長期的な関係。
その軸さえぶれなければ、道は必ず開けます。
焦らなくていい。
誠実に積み重ねれば、未来は静かに応えてくれる。
そう、過去の自分に伝えたいと思います。
⑤今後挑戦したいこと・次のステージで目指す姿
――「免許取得のその先まで寄り添う存在へ」
これから目指しているのは、単に“免許を取得する場所”を超えた存在になることです。
自動車学校は、多くの方にとって人生で一度きりの場所かもしれません。
しかし、運転は免許を取ったその日からが本番です。
だからこそ、私たちは“卒業後”にも価値を提供できる学校でありたいと考えています。
例えば、高齢者講習やペーパードライバー講習の充実。
運転に不安を感じたとき、いつでも戻って来られる場所であること。
「困ったらあそこに相談しよう」
そう思っていただける存在になることが、次のステージだと考えています。
また、地域とのつながりもさらに深めていきたいと思っています。
交通安全教室の開催や、地域イベントへの参加など、学校の枠を超えて“安全文化”を広げる役割を担っていきたい。
少子化が進む中で、自動車学校の経営は決して楽観できる環境ではありません。
しかしそれは同時に、“価値を再定義するチャンス”でもあります。
ただ免許を発行するのではなく、
地域の安心をつくる存在へ。
そのために大切にしたいのは、これまでと同じく「人」です。
設備が進化しても、制度が変わっても、最後に安心を届けるのは人の力です。
職員一人ひとりが誇りを持ち、
教習生一人ひとりが前向きな気持ちで卒業できる環境を整え続ける。
派手な拡大よりも、確かな信頼。
急成長よりも、持続的な成長。
その積み重ねが、地域にとってなくてはならない学校へとつながると信じています。
これからも、
安心・安全・そして温かさを大切にしながら、
次の世代へと続く学校づくりに挑戦していきます。




