――認知拡大が、ブランドと社会との新しいつながりを生むまで**
はじめに|なぜ「認知」を意識するようになったのか
愛知県豊明市で、従業員8人の建築会社を経営している。
地域に根差し、住宅やリフォーム、建築工事を中心に仕事をしてきた。長く地元で続けていれば、紹介や口コミで仕事は回る。実際、それで会社は成り立ってきた。
だから以前は、「認知拡大」や「ブランディング」という言葉に、どこか距離を感じていた。
大企業やIT企業がやるもの、派手な広告を打つ会社の話だと思っていたからだ。
しかし、経営を続ける中で、少しずつ考えが変わっていった。
・若い世代に会社の存在が知られていない
・何を大切にしている会社なのか、外からは伝わっていない
・建築会社としての“違い”が説明できていない
こうした課題に直面したとき、「仕事をするだけでは、伝わらないことが多すぎる」と気づいた。
そこから、会社と経営者自身の認知をどう広げていくかを、真剣に考えるようになった。
1. 認知拡大は「有名になること」ではない
「認知拡大」と聞くと、多くの人はこう思うかもしれない。
・フォロワーを増やすこと
・メディアに取り上げられること
・派手な広告を出すこと
しかし、私たちが目指した認知拡大は、そうしたものとは少し違う。
重要なのは、「誰に、何を、どう伝えるか」だ。
不特定多数に名前だけ知られても意味は薄い。むしろ、「価値観に共感してくれる人」にきちんと届くことの方が大切だと考えている。
建築会社の場合、仕事を依頼する人は価格や規模以上に、「会社の考え方」や「人となり」を重視する。
だからこそ、認知拡大とは
「会社と経営者の姿勢を、正しく知ってもらうこと」
だと定義するようになった。
2. 経営者の思いは、意識しなければ伝わらない
経営者には必ず、「なぜこの仕事をしているのか」という思いがある。
・なぜ建築業を選んだのか
・なぜこの地域で続けているのか
・どんな仕事を良い仕事だと思っているのか
しかし、その思いは言葉にしなければ外には伝わらない。
私自身、「ちゃんと仕事をしていれば伝わる」と思っていた時期があった。
だが実際には、現場の丁寧さや職人の姿勢は、完成した建物からは見えにくい。
そこで初めて気づいた。
思いは、語らなければ存在しないのと同じだということに。
経営者が自分の言葉で考えを語ることは、自己満足ではない。
それは、会社の判断基準や価値観を社会に対して開示する行為なのだ。
3. 「会社=人」である小規模企業の強み
従業員8人の会社では、経営者の考え方が会社そのものになる。
良くも悪くも、社長の判断や姿勢が、現場や雰囲気に直結する。
これは、大企業にはない強みでもある。
・決断が早い
・価値観がブレにくい
・顔が見える
つまり、小規模企業ほど「経営者の認知」がそのまま「会社の認知」につながる。
経営者が何を考え、どんな姿勢で仕事に向き合っているのか。
それを知ってもらうことで、「この会社に頼みたい」「この人たちと一緒に仕事がしたい」という関係が生まれる。
ブランドとは、ロゴやデザインだけではない。
人を通して感じられる信頼そのものだと実感している。
4. 発信は、事業の軸を自分たちにも教えてくれる
発信を始めて感じたのは、「自分たちが何をしている会社なのか」が、むしろ自分たち自身にも明確になったことだ。
・なぜこの仕事を引き受けたのか
・なぜこのやり方を選んだのか
・何を大切に判断したのか
文章にしようとすると、曖昧なままでは書けない。
結果として、事業の軸が自然と整理されていった。
発信は外向けの活動であると同時に、内省のプロセスでもある。
ブランドは作ろうとして作れるものではない。
日々の判断と行動を言葉として残す中で、少しずつ形になっていく。
5. 認知が広がると、出会いの質が変わる
発信を続ける中で、少しずつ変化が起きた。
・価値観に共感した人からの問い合わせ
・同じ課題意識を持つ経営者とのつながり
・建築以外の分野からの相談
数は多くないが、関係の濃い出会いが増えた。
これは単なる集客ではない。
社会との新しい接点が生まれている感覚だ。
事前に考え方が伝わることで、ミスマッチが減り、お互いにとって健全な関係が築きやすくなる。
6. 認知拡大の価値は、利益だけでは測れない
認知拡大やブランディングというと、売上や利益を期待されがちだ。
もちろん、それも重要だ。
しかし、私たちが一番価値を感じているのは、孤立しなくなったことだ。
地方の小規模経営者は、どうしても視野が狭くなりがちになる。
発信を通じて外とつながることで、考え方や選択肢が大きく広がった。
これは、経営において非常に大きな財産だと感じている。
7. これからの時代、小さな会社ほど「語る力」が必要になる
情報が溢れる時代だからこそ、無言でいる会社は存在しないのと同じになってしまう。
特に、次世代の働き手や顧客は、「どんな会社か」を事前に知ろうとする。
だからこそ、小さな会社ほど、
・何を大切にしているのか
・どんな未来を目指しているのか
・誰と一緒に仕事をしたいのか
を、自分たちの言葉で語る必要がある。
派手である必要はない。
正直で、等身大であれば十分だ。
おわりに|発信は、社会への扉を開く行為
会社と経営者の認知を広げることは、単なる宣伝ではない。
それは、社会に対して
「ここに、こんな考えの会社があります」
と手を挙げる行為だ。
愛知県豊明市の、従業員8人の建築会社でも、社会とつながることはできる。
むしろ、小さいからこそ伝えられることがある。
この文章が、発信を迷っている誰かの背中を、少しでも押すことができたなら嬉しい。




